2006年 10月 29日 ( 1 )

menu special ~Ma Chèrieが完成するまで

前編「~メニューができるまで」のあと、つづきが遅くなってすみません。
あのチョコレートムース:Ma Chèrieができるまでの思案の日々をお送りします。

チョコレートスパイス、このふたつのキーワードを目の前にして、
どんなケーキにするか、ケーキのどんなパーツにキーワードを盛り込むか悩みました。

先に思いついたのはスパイスのほう。
私はスパイスを使ったお菓子が好きですが、人によってはスパイスが苦手だったり、
特にくせの強いパンデピスは、日本人は苦手な人が多いようです。
ムニュ・スペシャルのお客さんはフランス人と日本人。
場所はフランスといえど、日本人のお客さんがおいしくないと思うものを
あえて作る理由はありません。
スパイスの要素を全面的に出すよりもむしろ、
スパイスはあまり・・と思っていた人に、意外なスパイスの魅力を知ってもらいたい
と考えました。
チョコレートそのものにスパイスを盛り込むことも考えていましたが、
いちばんくせが出にくいパーツとして、生地にスパイスを入れることにしました。
最終的にはその生地はココアになり、チョコレートとの組み合わせにもなりました。

悩んだのは、全体像です。
チョコレートのお菓子。
食後のデザートとして、重過ぎないものと考えるとムースにするのが妥当だと
グループ内での意見は一致していました。
でも、ひとくちにチョコレートのムースと言っても、どんなチョコレートを使うか、
どんな風味にするか、どんな硬さにするかで、全く違うものができます。
日本にいたとき、私はフルーツ系のお菓子が好きでたくさん食べてきましたが、
チョコレートは種類が少ないのもあり、あまり食べてこなかったのです。
自分の中の引き出しにチョコレートがとても少ないことにそのとき気づきました。
辻調フランス校の図書館に通い、チョコレートをキーワードに片っ端から探しました。

たくさんの本を見て、結局私の中に出た案は、
私の大好きなオレンジとの組み合わせでした。
オレンジの酸味で食後でもおいしく食べれるチョコレートのお菓子を、
そしてスパイスとの相性も抜群です。
頭の中で試作を重ね、いろんなお菓子のパーツひとつひとつから
自分のイメージに近い配合や全体のバランスへ調整していきます。

お菓子とは複雑なように見えて、実は本来は単純なものです。
いくつかの生地やクリームの配合があって、
そこから少しずつ何かを減らしたり増やしたり足したり引いたりして
バリエーションが山のように広がっていくのです。
そして組み合わせやバランスで、さらにバリエーションは増えます。

お菓子は算数だと、私は思います。
数学ほど複雑な計算はないけれど、小さな計算がたくさん必要です。
誰かが言ってました。
お菓子は建築だと。
なるほど、それも納得できます。
パーツを組み立てて、ひとつのものに仕上げるところや、
細工のような設計が必要なところが、とても似ています。
少しでもずれていると、家もお菓子も崩れてしまいます。

頭の中でおおまかな構造が組み立ったところで、実際の試作に入ります。
その前に製菓ではなく、調理の材料庫を見せてもらって、スパイスの研究をしました。
調理の先生や、友達にもアドバイスをいただきました。
お菓子に使えそうなスパイスを選んで、自分で調合します。
火を通すと香りが飛ぶことも計算に入れ、生地にまぜる分量を決めました。
ムースに使うチョコレートは、辻調フランス校で主に使われているカカオバリー社のものを
最初に使いました。

スパイスは苦手な人を意識しすぎて、入れる意味がないほどの存在感が出ず、
ムースも私が思い描く味にはなりませんでした。
カカオバリー社のチョコレートは酸味が強いものが多く、
それではオレンジの酸味とけんかしてしまうのです。
もともと私は苦味の強いヴァローナ社のものが好きで、
ムースのイメージもそちらに近かったのです。
もう一度、学校にあるチョコレートをかたっぱしから食べてみると、
やはり私の求めている味はヴァローナのチョコレートでした。
もう一度試作です。
生地の厚みや枚数も変えて、メンバーと試食をして意見を出し合います。

3回目の試作で、ようやくイメージするお菓子が完成しました。
形も最初は長方形も考えていましたが、最終的には円形に決めました。
仕上げの飾りはなかなか決まらず、また図書館通いをして悩みました。
中に何が入ってるのかひと目でわかるように、とのシェフの日ごろの教えに従い、
オレンジやスパイスを飾ることにしました。
乾燥オレンジスライスも手作りです。

*余談ですが、このときに出会ったとても美しい本は
  なんと!パリの学校Bellouet Conseilの本でした。
 一目ぼれして購入してパリにも持っていったのですが、
 学校に入ってから気づいておかしかったもの、
 なんだかとてもうれしかったです。
  だって、大好きな本のお菓子を学べるのですから!

こうやってやっとできあがったのがMa Chèrieです。

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日本では道具や材料が揃わないため、仕上げも違いますし、中身も少し変えていますが
できるだけ近いものを再現しました。
私のSpecialité、たくさんの人に味わっていただきたいです。

近日中に私のもうひとつのMenu Specialである
Tarte Citron(タルト・シトロン、レモンタルト)も紹介できれば・・・と思います。

お問い合わせは・・・
Pâtisserie Petite Ayako(プティット・アヤコ)までお願いします。
petite_ayako@excite.co.jp
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by petite_ayako | 2006-10-29 00:24 | histoires お話 | Comments(0)